事業再構築補助金に申請する際にまず考えなければならないのが類型(申請類型)についてです。
事業「再構築」補助金というぐらいですから、ご自分の事業を再構築つまり作り直す必要があります。
既存事業の業種・業態からどのような新事業に作り直すかによって、事業再構築補助金では
- 「新市場進出(新分野展開・業態転換)」類型
- 「事業転換」類型
- 「業種転換」類型
の3類型に分かれています。
また、再構築にともなって会社組織に何らかの変更を行う場合は「事業再編」類型に申請できますし、今まで海外の工場で製品等を製造していたけれども、今後は国内に工場を建てて国内で製品等を製造するといった場合は「国内回帰」類型に申請することもできます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「事業転換」類型
「事業転換」類型のもっとも大きな特徴は
中小企業等が新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること
です。
例えば
- (飲食業)今まで日本料理店を経営していた会社が、新たに焼肉店を開業する(細分類ベースで事業転換)
- (製造業)プレス加工用金型を製造している会社が、産業用ロボット製造業を開始する(細分類ベースで事業転換)
- (サービス業)今まで理容業を営んでいた方が、新たに美容業を開始する(小分類ベースで事業転換)
- (サービス業)今まで旅行業者代理業を営んでいた方が、新たにフィットネスクラブを開業する(中分類ベースで事業転換)
このような場合が「事業転換」類型にあたります。
「事業転換」類型の申請要件
「事業転換」類型の申請要件は
i.新たな製品・商品・サービスを提供することii.新たな市場に進出すること
iii.主要な業種が細から中分類レベルで変わること
の3つを満たさなければなりません。
新たな製品・商品・サービスを提供すること
文字通り「新たな製品」または「新たな商品」または「新たなサービス」を提供することです。
事業再構築補助金の場合、公募要領などに記載されている「製品」「製品等」という単語は、申請者の事業によって「商品」や「サービス」と捉えても差し支えありません。
自社が今まで製造したことがない製品を製造したり、販売したことがない商品、提供したことがないサービスを提供することがこの要件にあたり、今まで過去に製造したことがある製品、販売したことがある商品、提供したことがあるサービスを提供することは、一時期製造や販売を中止していたとしてもこの要件をクリアしたことにはなりません。
新たな市場に進出すること
事業再構築補助金では、「市場」のことを「顧客層」と読み替えていいようです。
例えば
- 今までは「法人向け」サービスだったが、「一般消費者向け」にも販売開始する。
- 今までは「一般消費者向け」の製品だったが、「法人向け」にリメイクする。
- 今までは「女性専門」にサービスを提供していたが、新ブランドを立ち上げて「男性向け」サービスとして提供開始する。
- 今までは「シニア向け」の製品だったが、性能・仕様を「若者向け」に見直した新製品を開発する。
といったこととが考えられます。
主要な業種が細から中分類レベルで変わること
「細から中分類レベルで」とは、日本標準産業分類で示される細分類、小分類、中分類のことをいいます。
「事業転換」類型に申請する場合、既存の事業から細分類レベルまたは小分類レベルまたは中分類レベルで変更した事業を新規事業(補助事業)にしなければなりません。
飲食業を例にあげると、
- 今まで日本料理店を経営していた会社が、新たに焼肉店を開業する(細分類ベースで事業転換)
- 今までてんぷら料理店(小分類は「762 専門料理店」)を経営していた会社が、新たに寿司屋(小分類は「764 すし店」)を開業する(小分類ベースで事業転換)
- 今まで店舗で牛丼を提供していたお店(中分類「76 飲食店」)がテイクアウト事業(中分類「77 持ち帰り・配達飲食サービス業 」)を始める(中分類ベースで事業転換)
といったものがあげられます。
例えば、先ほどの、新たに寿司店を開業した会社(寿司店部門を新たに設立した会社)が4年計画で事業再構築補助金に申請して採択されたとすると、補助事業が完了してから4年後には
- 新規事業(補助事業)の「すし店」の売上構成比が50%以上
- 既存事業の「てんぷら料理店」の売上構成比が50%未満
にならなければならない、ということになります。
もしこの会社が、既存事業としててんぷらのテイクアウト事業も営んでいたとすると、
- 新規事業(補助事業)の「すし店」の売上構成比が最も高い(例えば40%)
- 既存事業の「てんぷら料理店」の売上構成比が35%
- 既存事業の「てんぷらのテイクアウト事業」(中分類「77 持ち帰り・配達飲食サービス業 」)の売上構成比が25%
という具合に、補助事業が完了してから4年後には新規事業(補助事業)の売上構成比が最も高くなるように経営を進めていかなければなりません。
「事業承継」を視野に入れると吉
長い年月をかけて育ててきた既存事業を縮小することは、経営者の方にとって非常に難しい判断になると思います。
しかし、「事業転換」類型に申請したからといって、必ずしもすぐに既存事業を縮小しなければならないわけではありません。ご自身で選択した3年/4年/5年の事業計画期間を経て新規事業(補助事業)が主要な事業になればいいわけですから、その間に新規事業の運営を後継者候補の方にまかせてみるなど、補助金制度は後継者を育成するのにも活用することができます。
この機会に、後継者候補の方の会社・事業に対する想いを改めて聞いてみてはいかがでしょうか。
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