お酒の販売免許を取るときに「費用はいくらぐらいかかるのか」というのはどなたも気になるところだと思います。
今回は「通信販売酒類小売業免許を取るときにかかる費用」について解説していきます。
取得申請のときは
- 法定費用(税務署に支払う登録免許税)
- 申請書と一緒に提出する「添付書類」の取得費用(役所・法務局などに支払います)
の料金が最低限必要です。
しかし、よくよく考えてみるとそれ以外にも様々なお金がかかってきます。
後から「資金繰りが回らない」「こんなはずじゃなかった」なんてことにならないよう、酒類ビジネスをスタートさせるために必要な経費や注意点をまとめましたので参考にしてください。
通信販売酒類小売業免許の取得費用
酒類販売業免許を取って酒類販売ビジネスをスタートさせるとなると、取得申請のときに
- 法定費用(税務署に支払う登録免許税)
- 申請書と一緒に提出する「添付書類」の取得費用(役所・法務局などに支払います)
の2つが最低限必要です。
しかし、場合によっては
- 行政書士の代行手数料
- 株式会社設立費用
- 定款の目的変更登記手数料(&司法書士報酬)
といった費用や
- 事務所賃料
- 倉庫賃料
- 光熱費
- 通信費
- 広告費
といった毎月のランニングコストもかかるので注意が必要です(ビジネスモデルによっては他にもいろいろと・・・)。
それぞれいくらくらいかかるのか、大まかな費用を確認してみましょう。
法定費用(登録免許税)(3万円)
通信販売酒類小売業免許をはじめ、役所に対して許可・認可・免許などの取得申請をするときは管轄の役所(通信販売酒類小売業免許の場合は税務署)に「登録免許税」などの申請手数料を支払うのが一般的です。
区役所や市役所で住民票を取る場合も300円程度の手数料を支払いますが、通信販売酒類小売業免許についても同じなのです。
通信販売酒類小売業免許の場合は3万円を税務署に支払います。
ただし、他の許可・認可が申請時(申請書類提出時)に支払い、万が一許可が下りなかったときでも返金されないのに対して、酒類販売業免許の場合は免許が下りたことが確実になってか支払えばいいので、余計な心配が少なくなります。
これはこの免許制度の良い点のひとつです。
添付書類の取得費用(1,200円~)
申請するときには作成する申請書以外に住民票や会社の登記簿(全部事項証明書)などの書類を添付して提出する必要があります。
添付書類の中には役所や法務局などで発行してもらうものがいくつかありますが、そのとき発行手数料がかかってきます。
通信販売酒類小売業免許の申請について取得費用がかかる添付書類は下記のものになります。
- 住民票の写し
- 土地及び建物の登記事項証明書
- 都道府県及び市区町村が発行する納税証明書
- (法人の場合)登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
住民票の写し(300円程度)
個人事業主の方はご自身の住民票(抄本:本人のみ)を提出します。
法人の場合は代表取締役の方の他にも取締役・監査役がいる場合はその分の住民票も提出するのが通常です。
名称は住民票の「写し」となっていますが、コピーを提出するわけではなく、役所で交付してもらった紙そのものを税務署に提出します。
役所で取得するときは「本籍(国籍)を載せる。マイナンバーは載せない」と指定してください。
酒類販売業免許の申請では「本籍」(外国人の場合は国籍)が載っているものを提出します。
マイナンバーは載せないようにしてください。
マイナンバーが載っていると場合によってはマイナンバーが載っていない住民票を提出し直すように指示される場合があります。
土地及び建物の登記事項証明書(480円~600円)
酒類販売の営業所(店舗または事務所)の土地・建物の登記事項証明書、いわゆる「登記簿」を提出します。
これは法務局に行って取得するか、またはインターネットで取得請求をしますが、やり方によって取得費用が変わってきます。
- オンラインで請求(申し込み)して、法務局窓口で受け取る:480円
- オンラインで請求(申し込み)して、郵送してもらう:500円
- 窓口で請求してその場で受け取る:600円
「時間に余裕がある」「費用を節約したい」といった方はオンライン請求が便利でおすすめです。
オンラインで請求する場合はこちら(登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと)
※「登記情報提供サービス」(「登記ねっと 供託ねっと」とは別のホームページです)で取得した情報は申請には使えませんのでご注意ください。
都道府県及び市区町村が発行する納税証明書(各400円程度)
都道府県民税の納税証明書は各都道府県の都道府県税事務所で取得します。
市区町村民税の納税証明書は各市区町村の役所等で取得できるでしょう。
納税証明書には
- 未納税額がないこと(納税の滞納がないこと)
- 2年以内に滞納処分を受けたことがないこと
- 法人の場合はさらに「地方法人特別税」の未納・滞納がないことも記載されている必要があります。
取得するときに窓口でこれら3つの証明が必要だと説明するといいでしょう。
(法人の場合)登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
法人で申請する場合は「法人の」登記事項証明書を添付します。
いわゆる「登記簿謄本」つまり、法人にとっての「住民票代わり」のものを提出します。
※以前は「登記簿謄本」と呼んでいましたが、現在は「登記事項証明書」の名称に改められています。
法人の登記事項証明書には
- 現在事項全部証明書:現在の登記内容
- 履歴事項全部証明書:今までの登記内容すべて記載(変更履歴を含む)
- 閉鎖事項証明書:吸収合併や本店移転なども記載
- 代表者事項証明書:代表者に関する内容のみ
の4種類がありますが
申請に使うのは
- 履歴事項全部証明書:今までの登記内容すべて記載(変更履歴を含む)
となります。
これは土地及び建物の登記事項証明書と同様に法務局に行って取得するか、またはインターネットで取得請求をしますが、やり方によって取得費用が変わってきます。
- オンラインで請求(申し込み)して、法務局窓口で受け取る:480円
- オンラインで請求(申し込み)して、郵送してもらう:500円
- 窓口で請求してその場で受け取る:600円
「時間に余裕がある」「費用を節約したい」といった方はオンライン請求が便利でおすすめです。
オンラインで請求する場合はこちら(登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと)
※「登記情報提供サービス」(「登記ねっと 供託ねっと」とは別のホームページです)で取得した情報は申請には使えませんのでご注意ください。
行政書士報酬(10万円~)
取得手続きをご自分で行わず行政書士に依頼するという方法もあります。
取得申請はたくさんの書類を書いたり、税務署以外にもいろいろな役所に行って書類を取得したりと手間や時間のかかる作業です。
経営者自身が作業にかかりきりになっているとそれ以外のお店や会社の仕事が進みません。
それが困るという場合は行政書士に代行してもらうということも選択肢のひとつです。
ちなみに、酒類販売業免許は税務署が管轄していますが、弁護士・行政書士以外の士業(税理士・公認会計士など)は代行できないと法律で定められています。
通信販売酒類小売業免許の申請代行サービスを扱っている行政書士事務所のホームページを見ると、ほとんどの事務所が10万円~15万円となっています。
その金額にどんな手数料が含まれているかをよく確認してください。
例えば料金が10万円となっていたとすると、
- 法定費用(通信販売酒類小売業免許の場合は3万円)
- 住民票や会社の登記簿などの添付書類の取得費用や交通費・郵便料金
- お客様との面談の際の相談料や交通費・日当・郵便料金
といった費用が料金に含まれているか、含まれていないかが事務所によって違います。
だいたい料金10万円前後の行政書士事務所はこれらの費用が料金に含まれていないケースが多いようです。
弊事務所ではお客様に余計なご心配をかけないように料金設定も考えております。
弊事務所の料金をご参考にされたい方はこちらをご覧ください。
会社・法人設立費用 (合同会社6万円~/株式会社20万円~)
最初は個人事業主として酒類販売ビジネスを始めた方も、ビジネスが軌道に乗ってくると会社を設立するということがよくあります。
会社を設立すると同業者や金融機関などからの信頼が上がったり、個人事業主と比べて節税にもなるなど数々のメリットがあります。
ただし、通信販売酒類小売業免許については個人事業主のときにすでに免許を持っていたとしても、取得後に会社を設立したときは改めて会社として通信販売酒類小売業免許を取得しなければなりません。
つまり、「会社形態で酒類販売ビジネスを行う」と考えている場合は設立する前に酒類販売業免許を取得してしまうと費用も時間も2倍かかってしまうということです。
間違いなく酒類販売会社を設立するというのであれば、会社を設立してから酒類販売業免許を取りましょう。
また、すでに酒類販売の経験がある方の場合も、(あくまで事業計画を検討した上で)会社を設立してから免許を取得するのも選択肢のひとつです。
会社を設立する場合は酒類販売業免許の取得申請にかかる費用とは別に、会社を設立するための費用も必要になります。
会社・法人を設立する場合は下記のような費用が必要となりますのであらかじめ頭に入れておくといいでしょう。
株式会社を設立する際の費用
定款作成:自分で作る場合は0円/行政書士に依頼する場合は行政書士報酬
印紙税:電子定款の場合は0円/紙の定款の場合は4万円
定款認証の手数料(公証役場):5万円
謄本発行手数料:2,000円程度
登記手数料(法務局):15万円
その他
振込手数料などの雑費
設立手続きを行政書士に依頼する場合は行政書士報酬
登記を司法書士に依頼する場合は司法書士報酬
◆合同会社を設立する際の費用
定款作成:自分で作る場合は0円/行政書士に依頼する場合は行政書士報酬
印紙税:電子定款の場合は0円/紙の定款の場合は4万円
登記手数料(法務局):6万円
その他
振込手数料などの雑費
設立手続きを行政書士に依頼する場合は行政書士報酬
登記を司法書士に依頼する場合は司法書士報酬
目的変更登記の登録免許税(3万円)(&司法書士報酬)
もし既に株式会社や合同会社を経営していて、その会社の業務拡大として酒類販売ビジネスを始めたい場合は今ある定款を確認してみてください。
「事業目的」の欄に酒類販売ビジネスに関する内容が盛り込まれていない場合は、目的変更登記を行わなければ免許取得申請することができません。
目的変更登記の登録免許税(法務局):3万円
目的変更登記を司法書士に依頼する場合は司法書士報酬が別途必要です(1~2万円程度)。
事務所賃料(5万円~)
通信販売酒類小売業免許を取得する場合、つまり、通信販売を行う場合にはお客さんを呼ぶための店舗は必ずしもなくてもいいのですが、帳簿などを管理するための事務所は必要です。
ご自宅でビジネスをされる場合はご自宅の一室を事務所とすれば十分です。
しかし、他所にオフィスを借りる場合はその賃料も考慮に入れる必要があります。
シェアオフィスなど壁やドアなどで他の利用者と区画されていないような事務所だと免許は取れません。
レンタルオフィスなど、きちんと壁や施錠できるドアで区画されたスペースであれば取れる可能性があります。
事務所をどのような形態にするか
- 自宅兼事務所
- 他所にオフィスを借りる
など、いずれにしても申請書類を書いたり添付書類を集める前に方向性を定めておいた方がいいでしょう。
ご心配な点があればなんなりとご相談ください。
倉庫賃料(5万円~)
在庫のお酒を保管する場所が事務所にない場合は別に倉庫を借りる必要も出てきます。
その場合は毎月倉庫の賃料が必要になります。
飲食物を扱うからには衛生面はもちろん、お酒の中には温度管理が必要なものもあります。
在庫量にもよりますが、それらを満たす保管場所となるとやはり毎月数万円から十数万円程度の賃料がかかってくるでしょう。
その他
- 事務所や倉庫の光熱費
- 通信費
- 広告費
- 融資の返済元金&利子
事業経営を行っていると様々な費用が発生します。
後から「資金繰りが回らない」「こんなはずじゃなかった」とならないようにあらかじめ資金繰りや事業計画を考えておく必要があります。
申請書の中にも毎月のランニングコストも含めた事業計画的な部分があります。
しかし、それはあくまで申請用の簡易的なもので、1年間、2年間、・・・、10年間と事業を行っていくなら銀行に見せられるレベルの資金繰り計画や事業計画を考えなくてはなりません。
まずは1年間の資金繰り計画から考えてみましょう。
まとめ
今回は通信販売酒類小売業免許を取得するときにかかる費用について解説しましたがいかがだったでしょうか?
あらためて整理すると、最低限必要なのは
- 法定費用(登録免許税)(3万円)
- 添付書類の取得費用(1,200円~)
ですが、必要に応じて
- 事務所・店舗賃料(5万円~)
- 会社・法人設立費用 (合同会社6万円~/株式会社20万円~)
- 定款の目的変更登記(3万円)
- 行政書士報酬(10万円~)
といった費用がかかる場合もある、ということです。
酒類販売ビジネスでは免許を取るときの申請費用だけでなく、会社・法人の設立費用や毎月のランニングコストも考慮に入れて事業計画を立てることが重要だということがご理解いただけたでしょうか?
スタンドアップ行政書士事務所では酒類販売業免許の取得申請だけでなく会社・法人の設立や融資、返済不要の補助金についてのご相談も承っております。
ご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。
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